はじめに、皆さんはバリアフリーの意味を正しく理解されているでしょうか。
「バリアフリーって段差がないことでしょ?」というイメージを持っている人も多いでしょう。
もともとは建築用語として、道路や建築物の入り口の段差など物理的なバリアを取り除くという意味で使われていました。
しかし現代では、社会全体においては多様な人々が生活をしており、
すべての人を対象に暮らしていく社会の中にあるバリアを取り除くことを意味しています。
また、ひとりひとりがその意識を持ち、
多様な人々のことを思いやるという
「心のバリアフリー」も広げようという取り組みも増えており、
心理的な意味合いでも使われています。
「バリアフリー」の「バリア」とは、英語で障壁(かべ)という意味です。
知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
バリアフリーとは、生活の中で不便を感じること、
様々な活動をしようとするときに障壁になっているバリアをなくす(フリーにする)ことです。
バリアフリー住宅のためのおすすめの間取りとは?
バリアフリー住宅とは?
では住宅分野でのバリアフリーとはどのようなことを意味するのでしょうか。
バリアフリー住宅は、小さな子供から高齢者、介護が必要な方や身体的な障害を持っている方、妊娠中の方など、誰であっても安心・安全かつ快適に暮らせるという特徴を持つ住宅を意味します。
例としては次のような具体例があげられます。
●階段や段差がなく、手すりやスロープがある家
●開閉しやすく、出入りしやすい引き戸の家
●車椅子の使用を考慮した、ゆとりのある空間や廊下幅がある家
●温度差を少なくし健康面やヒートショックの予防への設備や仕様対策をしている家
バリアフリー住宅を検討する際には、その住宅には主にどんな人が生活をするのか、
後にどのようなこと、物が障壁となりうるのかを予測し考慮することが必要となります。
その状況によって考えるべきバリアフリーの対策も変えていくことになります。
バリアフリー住宅にはどんな特徴がある?適切な間取りとは?
バリアフリー住宅のメリット
バリアフリー住宅はその家に住む人にとって安心・安全で快適な生活を送ることを目的に設計されます。一般的な要望を取り入れる住宅とどのような違いがあるのでしょうか。
バリアフリー住宅にするメリットをもとに考えてみましょう。
◎スムーズな移動が可能となる
身体に障害などの不自由さがある方や高齢で室内でも車椅子を使用する方は段差がなく、
部屋の中や通路幅に余裕を持った広さがあることで移動が楽になります。
◎高齢者の転倒事故の予防ができる
転倒の原因となる段差や滑りやすい床、
立ち止まるスペースや掴む場所がないなど障壁を取り除き、
必要な設備の取り付けを施すことで高齢者の事故に多い転倒の予防対策ができます。
◎生活動線が改善できる
生活動線とは、普段の生活の中で行う動作を伴いながら移動していく足取り、道線です。
自立した生活ができる人と違い、バリアフリー住宅に住むのは自身で生活のすべてを行うのが困難な方々です。そのため、スムーズに移動し動作できる設計が重要となってきます。
バリアフリー住宅にすることで何度も同じことを繰り返す必要なく日常生活を送ることができるようになります。
◎介護する側と介護を受ける側、双方の負担を軽減できる
バリアフリー住宅に住む方の状況によっても変わりますが、
日常生活を送るために介護を必要とする方の場合には、
自身で行うのが困難な動作などは介護者の援助を要します。
そのときに双方の視点から安心・安全に動くことができる造りとなっているので無理が生じにくくなります。また、介護の有無に関わらず、高齢で足腰が弱くなった方や手がかかる小さな子供や妊婦さんにとっても安心・安全に暮らせる住宅であり、日常生活を見守る家族にとっても負担が軽減されるメリットになります。
間取りを考える時のポイント
では実際にバリアフリー住宅を建てる際の間取りはどのようなポイントをふまえて考えると良いのでしょうか。
押さえるべき間取りのポイントを説明していきます。
◎段差をなくし広さを確保する
段差があるとつまづいたり、転ぶ原因ともなり、車椅子を使用する際には小さな段差だとしても不便さを感じ、介護者の負担も増えることになります。
どうしても段差を解消できない場合には、
手すりを設け、そこに何か触れると音が出る物を置いたり、目視可能であれば目印を付けることも対策となります。
また、介護者もいる場合には一緒に動作をするために十分な広さがないと介助しにくく負担が増すことになります。ご本人の動きやすさにとってもゆとりのある広さは必要であり、間取りを考える際に重要なポイントとなります。
◎動線を意識する
家の中を移動する際に何度も行ったり来たりせずに目的場所までスムーズに進めるよう回遊動線を取り入れ行き止まりがない間取りにしましょう。
移動する距離が長くなると、転倒リスクだけではなく、介護者側の負担も増えることになり、大事なポイントとなります。
◎寝室の近くに水回りを配置する
動線を意識することにも関連してきますが、
バリアフリー住宅で生活を送る方々はベッドや布団などで1日を過ごすことも多くなります。
普段よく使うキッチンやトイレ、
浴室などは移動の距離が短く済むよう寝室に近い場所へ設けることをおすすめします。
また、夜間トイレに行く方にとっても寝室から近くにあるほうが移動が楽になり、
移動距離が短いことは転倒の予防対策にもなります。
◎転倒予防の対策
移動の際や、かがんだり身体の重心が動く動作を行う場所(玄関、トイレ、浴室など)では転倒リスクが高くなります。
予防策として手すりの設置や滑りにくい床材を採用しましょう。また、これまで使っていて慣れた室内スリッパや靴が滑りやすい素材のものではないかや、体重など負荷がかかると動いたり倒れてしまう家具類や置きっぱなしにしている物なども動かないように細工するか使用をやめるようにしましょう。
◎温度差を少なくする
特に高齢になると体温の維持機能や血圧の変動も大きくなりやすく、
住宅内の室温環境に差があると心疾患やショック症状を起こす原因になります。よってバリアフリー住宅ではこれはらの健康上のリスクを低減するための設備を取り入れたり、気密性・断熱性を高めた造りにすることも重要となっています。
まとめ
バリアフリー住宅は障害がある方や高齢者だけではなく、
その家に住む家族全員が安心して安全で快適な日常生活を長く送ることができる工夫がされた住宅です。
また、バリアフリー住宅を建てる際には一定の条件を満たせば国や地方自治体から補助金を受け取れる制度もあります。
これらの制度も理解し、必要な状況に備えたバリアフリー住宅を建てる参考にされてください。